覚書 ―吸音遮音―
DIYをやっていると、せっかく作るなら高い性能が欲しくなったりします。
ところが、しっかり計画をしないと、こんなはずでは…となるのが、「防音」という分野です。
また、材料や性能も数多く流通していて、どの製品を選択すれば良いか分かりにくくもあります。
ということで、ここでは
が伝わるような内容にしたいと思います。
ザックリ、防音というのは「反射」と「吸収」の2つの方法で成り立っています。
よく、防音対策をしたのに思うような効果が得られないという場合があります。
それは製品の詐欺という訳ではなく
この原因は2つ!
材料の厚さ不足や材料に偏りがある場合です。
ただし、材料の厚さは「壁の厚さ」等によりますので、出来るだけ厚い方が効果的とだけ言っておきます。
「標的」とは周波数のことで、消したい音に対して有効な手段を間違えてやってしまっているという場合です。
例えばですが、
高い音 ― 固い床にスプーン等を落としたような音
中くらいの音 ― 人の話し声
低い音 ― ベース音や重いものを落としたような音
と、分けた上で
グラスウールを使った場合、高音と中音は小さくなりますが、低音はそれほど小さくなりません。
資金が許せば、分厚くしていくことである程度の効果は得られます。
ですが、そんなにしなくても効率的に防音性能を高めることが出来ますよ。というのが今回の覚書です。
壁の厚さや重量に制限が無い方のために
原理より先に
例えば、コンパネon遮音シートon石膏ボードなどの組み合わせです。
極力薄くするときの選択肢です。ただし、重くなります。
性能の上昇率は「密度」<「厚さ」なので、厚さを増やす方が効率的。
基本的な防音性能が上よりも高い。ただし、湿気対策に注意。
上の二つは異なる原理で防音していますので、併用で大きな効果を期待できます。
低音は特殊な対策が必要です。
低音と言っても幅はありますので、得意分野ではありませんが、上の対策でも減少効果は期待できます。
ここでの「板」は1)のものとは異なり、薄いものを指します。振動させて減衰させるので曲がりにくい材料では効果が下がってしまいます。ガッチリ固定しても効果が下がります。
「空気バネ」は密閉された空気の層で、厚くなるほど性能が上昇します。
空気バネの音を受ける側は、シート状のもので作るなりして、音に柔軟に対応できるようにします。
低音に有効な対策です。ただし、半密閉の場合、効果は半減します。
これだけで、だいたいの要望には応えられます。
ここから先の
防音対策の「計画」に役立ちます。
冒頭にも書いたとおり、キリが無い割に間違うと効果が出ません。
ついでに言うと、制限というか、建物の状況はそんなに自由なものばかりではありません。
そこで、目標とする性能に対して、
完全に計画したい方は「建築音響と騒音防止計画」という本に原理から数値、計算式、対策などもろもろが載ってました。
一つ目は
では、どんどん重くしていけばより良くなるのかというと、この法則には得意不得意があり、
また、
この「癖」というか現象を「コインシデンス効果」と言って、どんな材料にもあります。
ここで注意してほしいことは、低音と特定周波数の
一つの材料で仕上げたら、「低音」と「人の話し声」が透過してしまうなんてことが起こりえます。(体感では失敗に感じるケース)
できれば面密度の異なるもの(違う原料によるもの)で行うと確実で、質量則による性能を上げつつ弱点を補いあうことが出来ます。
そんな訳で、
ちなみに、
反射はより遠くに音を届けることが出来る一方で「反響(やまびこ)」を発生させることがあります。
音源からの距離が17mを超えて反射すると、時間差が生じ、演奏や音楽を聴く等には向かない環境になってしまいます。
それを
二つ目は
まずは「拡散」から。反射は距離による自然な減衰ですが、拡散はその内部構造によるその場での減衰になります。
こちらも
基本的には繊維材が効果の要因になっていて、
グラスウールは断熱性と防音性も合わせ持つため、広く普及していることにも納得がいきます。
断熱同様、
密度が高いということは同じ厚さの中により複雑な構造を持っていることになりますので、その分音を細かく拡散させ、相殺したりできます。
弱点は質量則同様、「低音」と「特定周波数」ですが、
グラスウールについていえば、施工上、厚さが性能に直結しているので、少なくとも10センチ程度の厚みで計画する必要があります。
よく局所的な吸音板などを目にしますが、あれの目的は場所による補正を含まない音を聴く為で、室内外の防音という意味では効果は限定的です。
音の性質には「回折」というものがあり、障害物があっても裏側に回り込む動きをします。(低音ほどよく回り込む)
ですので全面を覆わなければ防音効果としては非力で、音を扱うクリエイターのこだわりの世界だと考えても良いと思います。
三つ目は
さて、ここまでで
でもこれ低音が悪い訳じゃなくて、
人の耳は
なので、他の中〜高音域と
低音対策3)で「中〜高音」の性能を上げると書いたのは低音のレベルに合わせるという意味があります。
もちろん、波長が長いことなんかがコレまでの対策に合わないということもあります。
そこで、次の吸音(変換)という対策を検討していくわけです。
四つ目は
アーティストのライブでベース音やドラムの音が体に響くという経験はありますか。
端的にいえばこの時の「体」がこの原理と似ています。
コンサートホール等の音響設計をする時は収容人数、客席の配置等も考慮します。
これは人がそれだけ音を吸収(変換)するからです。
それに端を発したかは定かではありませんが、音を振動に変えてしまおうというのが今回の原理です。
エネルギー保存の法則によれば、エネルギーの総和は等しいことになります。
今回の場合、振動に変えた分もとのエネルギーは小さくなり、結果として音の減少を感じるという訳です。
その為に、振動する物体(板)と効率よく受けられる物体(空気バネ)を使います。
逆にいえば、原理さえ理解していれば、この組み合わせでなくとも良いのです。
今回、板材として使ったのは
この丸い穴が等間隔にあいている黒い板のことです。防音壁のつくり方はDIY工事項目-防音壁-に載せてあります。
別に
というのは、
いわばついでであって、どうせなら防音効果を高めましょうというだけで、4)の低音対策とは関係ありません。
加工する分、コストは上がりますので興味があればご検討ください。というやつです。
という事で文章の多い覚書となってしまいました。
計算式で説明しても嫌になる方が早いと思いましたのでこのような形になりました。
我こそは理系なり!という方は実験データと公式の中から最良の解答を導きだしてくださいm(_ _)m
こんな話するとやる気無くなるかもしれませんがよほどの邸宅や規模でない限り、計算の解答は
次は